膝・股関節のよくある疾患

変形性膝関節症

整形外科の外来で、もっとも多い訴えはひざと腰の痛みです。
誰でも年を重ねるごとに膝(ひざ)の軟骨がすり減ってくるのは仕方のないことです。近年医学の進歩に伴って寿命がずいぶん延びてきましたが、そのために「心臓は丈夫だが膝が痛くて歩けない」という方も増えてきました。膝が痛くて歩くのが億劫(おっくう)になると、足腰が衰えてきます。これはいわゆる「寝たきり」への第一歩となりかねません。年だから仕方がないと諦めてしまわずに、元気に歩ける膝を維持することは大切ではないでしょうか?

軟骨

大腿骨及び脛骨の先端は表面が軟骨で覆われており、軟骨同士が接触して体重を支えています。膝のお皿の裏側も軟骨で覆われており、大腿骨の軟骨面と向き合っています。正常な軟骨は意外と硬くて強度があり、表面がツルツルしていて殆ど摩擦がありません。弾力があって美しい軟骨ですが、年齢とともに次第に変性し、すり減ってくるようになります。表面がバサバサしてきたり強度が低下して柔らかくなってくるにつれ、すり減った軟骨の“カス”が刺激になって炎症を起こし、膝に水がたまるようになります。

症状

軟骨がすり減ると、少しずつ膝の違和感や痛みを感じるようになります。最初は、立ち上がる時の痛み、階段を降りるときの痛み、正座したときの痛みなどが特徴的です。次第に重症化してくると、痛くてまともに歩けないという具合いになってきます。膝が伸びきらなくなったり、充分に曲がらなくなったりもします。「膝に水がたまる」こともあるかもしれません。

原因は?

年齢とともに膝の軟骨がすり減るのはいわば当たり前ですが、肥満や O脚、外傷、膝の酷使が関与しています。特に肥満は、変形性膝関節症の重大な危険因子であることが証明されています。

対策は?

40歳を過ぎたら、膝のケアを行うことが重要です。膝にとって良いことはなるべく実行しましょう。悪いことはなるべく避けることも大切ですね。良いこととしては、大腿四頭筋の強化とストレッチ、体脂肪の減少などです。悪いことは・・?
階段をたくさん昇ること、膝が痛いのに無理してしゃがんだり正座をすること、体重増加も好ましくありません。

整形外科ではどんな治療をするのですか?

大腿四頭筋強化のための運動療法や、消炎鎮痛剤の内服、ヒアルロン酸の関節内注射、膝の装具や靴のインソールなどの装具療法などがあります。
これらを組み合わせて治療を行えば、ほとんどの場合症状は改善されます。もし、どうしても痛みが改善しない場合には後述のような手術療法も考慮されます。

手術をすることもあるのですか?

膝の軟骨が痛んでいるときには、軟骨と軟骨の間の半月板も変性していることがほとんどです。痛んだ半月板が断裂して、これが軟骨と軟骨の間に挟まると引っ掛かって強い痛みを生じます。このような場合は関節鏡手術が有効です。
軟骨の磨耗がひどくて、痛くて歩行がきついような重症例では人工関節置換術を行います。また O 脚がひどくて膝の内側に強い痛みがあるが外側は正常な軟骨が残っている場合、高位脛骨骨切り術を行います。

水を抜くと癖になると聞いたのですが?

少しならば水がたまっていても抜く必要はありません。しかし多量にたまっている場合には、いろいろな意味で抜いた方が良いと思います。膝がパンパンにはっている感じが楽になりますし、大腿四頭筋の筋力も向上します。
癖になるというのは間違いです。風邪をひいたときに鼻水が出ますが、鼻を噛むと癖になると考える人はいないですよね。鼻をかんでも再び鼻水がたまるのは風邪が治っていないからです。水を抜いてもまたたまるのは、膝の炎症がおさまっていないからです。

膝が痛いと、歩かないほうが良いのですか?

少々痛くても歩いて構いません。もしできるならウオーキングも良いですよ。ただし膝に負担のかからないクッション性の良いウオーキングシューズかジョギングシューズを使用して下さい。日常生活に支障があるくらい歩けない場合は、先生とよく相談して下さい。
痛くてウオーキングができない人は、水中歩行がお勧めです。水中では浮力の働きで膝にかかる負担が軽減しますし、水の抵抗で筋力の強化になる、水流の影響でリラクゼーションにも有効など利点が一杯です。

大腿骨近位部骨折 = 広い意味での大腿骨頚部骨折

高齢になると足腰が弱くなって転倒しやすくなるうえに、骨粗しょう症のため骨が脆くなってきます。そのため脚(あし)の付け根を骨折するリスクが高くなってきます。全国で毎年およそ11万~12万人の人が広い意味での大腿骨頚部骨折を受傷すると推定されています。そのうち立った高さからの転倒によるものが80%近くを占めており、転倒の予防が非常に重要です。
脚の付け根の骨折ですから、当然痛くて歩けません。身をよじったり起き上がることも困難となるので、放置すれば寝たきりになってしまうことになり、全身状態が衰えて肺炎・褥創・食欲不振・認知症の悪化など様々な合併症を引き起こす可能性があります。すなわち大腿骨近位部骨折は命にかかわる骨折なのです。早く起き上がれるようにすることが何よりも重要ですから、治療法は手術が原則となります。日本整形外科学会が毎年行っている全国調査では、手術を行った例が約 95% を占めています。
簡単な解剖の勉強をしておきましょう。大腿骨の先端部は丸くなっており表面を軟骨が覆っています。この部分を頭になぞらえて骨頭(こっとう)と呼びます。頭の下の部分は首になぞらえて頚部(けいぶ)と呼ばれます。その下は大転子と小転子と呼ばれる突起のある部分であり、転子部と言います。大腿骨近位部骨折(広義の大腿骨頚部骨折)は、頚部の骨折 すなわち(狭義の)大腿骨頚部骨折と転子部の骨折 すなわち大腿骨転子部骨折に大きく分けられます。
前者(すなわち狭義の頚部骨折)は骨がつきにくい、また骨がついても骨頭壊死のリスクがあるという特徴を持っています。骨頭を栄養する血管が丁度骨折部で ちぎれたり よじれたりして、血行障害を起こしやすいからです。このため骨折部のズレが大きい場合には、骨癒合を断念して人工骨頭で置換するという手術を行います。ズレが少ない場合には、スクリューや特殊なピンを利用して骨折部を固定するという手術が選択されます。後者(すなわち転子部骨折)は骨がつきやすいという特徴があるため、プレート&スクリューや髄内釘を利用して骨折部を固定するという手術が行われます。
いずれにしても、手術によって早期に離床(起き上がる・立つ・歩く)が可能となり、リハビリテーションを積極的に進めていくことが可能となります。手術には高齢者ゆえの合併症やリスクも否定できませんが、「命にかかわる骨折」であることを踏まえて、多少のリスクがあっても敢えて手術に踏み切ることが多いようです。手術するか否かについては、主治医の先生とよく相談されて決断するとよいでしょう。

大腿骨内顆骨壊死

60歳以上の高齢者にみられる原因不明の骨壊死であり、膝の内側(大腿骨の内顆)に強い痛みを生じます。レントゲンでは程度の差こそあれ変形性膝関節症の所見がみられますが、最初は骨壊死に特徴的な所見はないことがほとんどです。1-2ヶ月経つと、本来丸みをおびている大腿骨内側の荷重面がレントゲン上 次第に平らになってきます。早期の診断には MRI が有用です。壊死の範囲が狭ければ、安静や、消炎鎮痛剤、装具療法などで症状が軽快しますが、病巣が大きいと壊死部が陥没して O脚が悪化し内側の軟骨がさらに傷んできます。痛みも強くて機能障害が大きいため、手術を必要とすることが多いようです。
手術としては高位脛骨骨切り術 (HTO) が原則ですが、症例によっては UKA を行う場合もあります。

変形性股関節症

成因 大部分が二次性、膝との違い

股関節は球状の骨頭と、これを覆う”おわん”のような臼蓋(きゅうがい)からなっています。非常に安定した関節で通常は一生涯大丈夫ですが、何らかの原因で骨頭と臼蓋のバランスが崩れると長い経過とともに軟骨が磨り減って痛みや歩行障害を生じるようになります。膝の場合は特別な原因が無くても年齢に応じて少しずつ軟骨が磨り減ってくるので、対照的です。

臼蓋形成不全 脱臼・亜脱臼

日本人の場合、原因の大部分は赤ちゃんの頃から臼蓋が浅くて小さいことで、これを臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)といいます。あまりに”おわん”が小さいと脱臼していることがあり、これを先天性股関節脱臼といいます。たとえ脱臼していなくても、小さい臼蓋では骨頭を十分に覆うことができないので、体重が狭い範囲に集中してしまいます。軟骨が次第に磨り減って、多くは20歳から40歳代までに股関節の痛みを生ずるようになります。その他の原因としては、大腿骨頭壊死症、骨頭すべり症、リウマチその他の関節炎などがあります。

前期、初期、進行期、末期

レントゲン上、まだ軟骨の磨り減っていない前期から、骨頭と臼蓋の隙間がまったく消失してしまった末期まで、大きく4つに分けられます。骨頭と臼蓋のバランスがある限度を超えて崩れると、次第に進行・悪化していくのが避けられません。そこで一生を通じた戦略が必要になります。現在の痛みだけではなくて、臼蓋形成不全の程度、年齢、職業、レントゲン上の進行度などを、患者さんと一緒に総合的に考えて治療法を選択していきます。患者さんは女性が大部分なので、結婚・出産・育児の問題も無視できません。タイミングのよい手術を行ったほうがよいこともあります。

骨切り術 vs 人工股関節置換術

まだ若い人の場合、前期・初期のうちに骨切り手術を行って骨頭と臼蓋のアンバランスを正してしまえれば、それ以上の進行を防ぐことができ痛みも軽減されます。いくつかの手術がありますが、代表的なものとして寛骨臼回転骨切り術(かんこつきゅう・かいてん・こつきりじゅつ)があります。英語では RAO (Rotational Acetabular Osteotomy) と名付けられます。これは骨盤を大きく切り込んで、臼蓋の”おわん”を回転させ骨頭を屋根で覆うようにする手術です。
逆に進行度が末期で痛みが強く高齢の場合、特に骨頭が潰れてしまっているようなケースでは人工股関節置換術 (THA) を行います。骨盤と骨頭側のそれぞれを人工のパーツで置き換える手術です。前述のいずれにも当てはまらない場合は、リハビリテーションを行ったり、骨盤や大腿骨の骨切り術、あるいは筋切り術を行ったりします。

自分で気をつけることは?

股関節に問題のある人は過度の負担を強いるようなスポーツや重労働は避けて、筋力の強化を図りましょう。特に水中歩行は非常に良いリハビリテーションになります。肥満を避けて、専門医による定期的なチェックを受けながら、長年のお付き合いをしていかなければなりません。
股関節にかぎらず足腰の問題は、運動器の生活習慣病と考えられます。何でも相談できる整形外科の「かかりつけ医」を見つけてください。

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